いつもなら家から近い阪急電車を利用するんですが、JRの駅の途中にちょっと用事があったので、そのままJRで病院まで行くことにしました。
「あぁ~、今日で倒れて一週間か~」って思いながら歩いていると、
反対車線の歩道で人が倒れているんです。
私が見つけたときは、1、2人がただ呆然と見ているだけ。
救急車を呼ばなくっちゃ!!
って思ったけど、イザとなったら番号がわからない。
隣にいたおっちゃんに、
「救急車って何番でしたっけ?」
「199やっ」
199をかけると「現在使われていません」とテープの声。
「119番やん!」
分かっていてもアタフタしてなかなか119が押せないんです。
ちょうど車も途切れたので、私は急いで反対車線の歩道に駆け寄りました。
その時、ポッチャリした女性と、サラリーマンの男性が対応をしていました。
倒れている女性の横にはバイクが転倒していたので
「どうしました?事故ですか?」
「そうみたいです…。僕も見つけたときには倒れてて…」
うつ伏せになってる女性の口辺りの歩道には血が…
倒れている女性に
「大丈夫ですかー!どうしましたー?」
声をかけても微動だとしません。
うつぶせの女性を仰向けにすると
周囲で見ていた人が、
「こういうときは動かしたらあかんで」
確かに。
でも、ヘルメットをはずし反応を見ないと。
バイクで転倒したときに顎を怪我したようです。
でもほとんど出血はありません。
他には鎖骨が折れてるみたい。
「救急車は?」
「あー、分からない…」
今度は間違えないように119番に電話をしました。
「事故です!女性が歩道で倒れています。早く来てください。」
「状況を詳しく説明してください」
「60歳代女性、バイクで歩道に乗り上げ転倒しています。」
「意識はありますか?」
「ありません」
すると、女性はゲップのようなものをしました。
「あー!動いた!ゲップしました!あ…でもその後全く動きません」
「脈は?」
「脈!?」
サラリーマンが脈を取ってくれました。
腕の脈を取りながら呼吸を確認するけど、どう見ても呼吸をしていません。
私も喉の脈を取るけど、興奮しているからか脈が取れないんです。
女性は3度ゲップをしてから全く動かなくなって、
その後、見る見る血の気がなくなっていきました。
通報を受けた警官が自転車で駆けつけてきました。
「どうしましたー!大丈夫ですかー!」
女性は反応なし。
警官は私たちに
「この人の身元分かるものはありますか?」
バイクのシートの中に鞄があるかも?
私と男性が倒れているバイクを起こし鞄を発見。
そのまま警官に渡すと、
「鞄の中身を確認しますので、あなた見ていてください」
私が一緒に財布の中身を確認。
免許証が見つかりました。
免許証の写真は倒れている姿とは全く違う表情が…
元気だったらこの人はこんな顔なのか…
そうこうしていると救急車が来ました。
救急隊は、女性に「大丈夫ですかー」と声をかけても全く反応なし。
目を開けてライトを照らすと瞳孔の収縮は全く見られず。
すぐに心臓マッサージ。
もしかして、もう心停止やったの!?
必死に脈をとってもなかったはずや…
あの女性は大丈夫やったんやろうか…
身内の者が倒れて一週間目の金曜日。
まさか違う人の命が亡くなる瞬間に遭遇するなんて…
女性の家族は一週間前の私と同じ心境になるんだろう…
大丈夫だろうか。
免許証に書かれていた住所は2つ隣の市。
買物した形跡も無く、夕方だったこともありたぶん仕事帰りに事故にあったようでした。
救急車で運ばれ呆然としていると、警官から
「通報者は誰ですか?」
「はい」
「あなたの住所、年齢電話番号は?その時の様子を詳しく教えてください」
事細かに質問されました。
でも、私は事故の瞬間の目撃者じゃーないので、詳しく聞かれても・・・
目撃者は最初にいたポッチャリした女性たった1人。
彼女の話を聞いていると、
目撃女性は対向車をバイクで走っていると、事故した女性のバイクがそのまま歩道に乗り上げ電柱に衝突し転倒したそうです。
車と接触した様子ではなかったそうです。
普通に走っていて、すーっと左に寄り歩道に乗り上げたみたいなことを話していました。
その後、交通事故の鑑識官の車が到着し、ライトを持った鑑識官が道路のタイヤ痕やバイクをくまなくチェックし、車と接触した形跡が残っていないか確認していました。
その頃になると、第一発見者の女性や一緒に対応していたサラリーマンは気がつくと姿を消していて、状況を知っているのは私だけでした。
鑑識官にも警官と同じ質問をされ、第一発見者が証言していたことを鑑識官に伝えました。
鑑識官の動きを見ていると、死亡事故だからここまで丁寧に調べているのかもって思えてきました。
「女性は大丈夫でしょうか?」
「危険な状況なので、三島の救急センターに輸送されました」
三島の救急センターは、命の危険がある場合に運ばれる病院です。
救急車が到着した時、たまたま非番で帰宅途中の救急隊員が駆けつけ手伝いをしていました。
救急車を見送ると、その人は「あの状況はだいぶ厳しい」って言っていたのを思い出しました。
いろんな話を総合すると、バイクを運転中に心臓発作が起こった可能性が高いようでした。
それで、そのままバイクは歩道に乗り上げ転倒。
駆けつけた時には心停止。
あのゲップは彼女が必死に息をしようとしていた姿だったのかも…
あの時、すぐに心臓マッサージをしていれば、また心臓が動き出していてそのまま呼吸ができたのかも…
あのゲップが彼女の最後のあがきだったのかも…
そう思うと、何もできなかった自分が情けなくなりました…
人の命って、いつ突然奪われるかわからないものですね…
人事とは思えないです。
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