映画好きの人って多いと思いますが、
私、映画がすごい好き!ってわけじゃないんですよねー

だって映画って、ほとんどが作られた物語、フィクションでしょ?
特にファンタジーなど興味なし!
私はドキュメント(ノンフョクション)が好きなんです。
まぁ〜、ドキュメントでも、撮影者の私考や意図で、偏った内容で映し出されることもありますが・・・

私が見たいと思う映画は、時代背景を忠実に再現しているような歴史モノ。
映画の中身も見ますが、私は映画に出てくる場所や時代背景、当時の服装などが気になるんです。
「あの時代は、本当にあのような生活をしていたのだろうか?」
そんな視点で見てるんですよねー
そんな風に映画を見るなんてナンセンスやーって思われる方もいるでしょうが、
民俗学や軽ぅ〜く歴史が好きな私は、どうしてもそういう目線で見てしまうんです。


民族博物館映画会で、4/13に上映していた『山の郵便配達』は、小説です。
映画ではトン族が住む地域が舞台ですが、内容はあくまで作られた物語。

上映前、民博の研究者が今回の映画上映会の主旨や映画の大雑把な説明をし、
ロケ地となったトン族の村々の事を、トン族を研究している兼重さんが、
この映画はどの地域で撮影されているか、映画の中での郵便配達のルートまで
地図を元に詳しく説明をしてくれました。
普段聞けない研究者の方からの目線で、トン族のことを知ることができて、
映画もとっても妙味深く見ることができました。

映画ではトン族が舞台となっていますが、あまり忠実には描かれていないようです。
映画に出てくる村人もトン語で話していないそうです。
BGMに少しトン族の歌が出てくるだけ。(これは私も分かりました!!)
私でさえ、違和感を覚える部分がありました。
特に、主人公の親子が一泊目に泊まるトン族の村で、息子と仲良くなるトン族の女性。
どう見ても漢民族やん〜
もうちょっとトン族っぽい女性にしてほしかったわー
それと、通りすがりの村の女性がカゴを背負ってたんですが、
兼重さんが調査しているトン族の村々は、カゴを背負っている人はいないそうです。
村人は、カゴではなく天秤を利用しているそうです。
トン族は、貴州省が一番多く住んでいます。
私は貴州省で、映画に出てくる同じカゴを背負っている人をたくさん見ましたが、
映画に出てくるトン族の村は、兼重さんが調査している地域とすぐ近くなんです。
実際、調査した村も出てくるそうです。
映画の内容はいいけど、トン族の文化に無いものまで出てきて、
兼重さんにとってはかなり違和感があるそうです。
そらそうやろう〜
だって、一度しか行ってない私でも、何度か「ん?」って思う場面があったもん。
きっと、監督や映画を作った人は、トン族のことをあまり詳しく知らないんでしょうね。

映画を通じて民族やその地域の文化を知ることができて、とってもいい映画会でした。


映画を見終わってから兼重さんに質問する時間があり、たくさんの人が手を上げて質問していました。
知的な質問が多くて、みんな研究熱心で、私と同じ列の女性は映画を見ながら
いろいろメモをとっていて、兼重さんに疑問していました。

がっ、しかし!
こんな素晴らしい上映会に「納得できない」という人が出現!

ちょっと上品な年配女性がマイクを手にして、
「私、この映画を初めて見たとき感動して、中国に住む監督の連絡先を調べて、
手紙を書いて、監督から直筆で返事を頂いたこともあります。。
この映画は、一言では言い表せることができないほど素晴らしい映画だと思っています。
しかし、今日の上映会はガッカリしました」

えっーーーーー!? ガッカリ! ?
どういうこと!? 映画の内容は一緒ちゃうん〜!?

「いくらトン族が舞台になっているからといって、トン族の詳しい解説など必要ないと思います。
素晴らしい映画が台無しでした」

おいおい! あんた何を言うてまんねん!?
普通一般的な映画解説とかなら、映画の物語や内容、俳優の裏話をするでしょう。
しかし、この上映会の解説は、あくまで「トン族(そこに住む地域)の人々や文化」の説明。
今回は、「映画を通じて、ロケ地・舞台となったトン族のことを学びましょう」っていう主旨やん。
わかってないのはあんたでっせ!

その女性は、今回の映画会に対しての不満はそれだけではなく、
思わず椅子からズリ落ちそうになる場違いなコメントをしていました。
女性の不満を聞いていると、どうやら映画の内容をノンフィクションのようにとらえていたようです。
だからトン族の専門家から「トン族にはないことが描かれている」とか言うもんやから、
反発したようです。

アメリカ映画のように有名俳優が出ているアクションモノやロマンスモノ、
SFモノなどは非現実的と思うでしょうが、
中国の山奥が舞台になっていて、今でもそのような生活をしていそうな映画ともなると、
映画とは分かっていながらも、
「ほんとうにこのような親子がいて、今も徒歩で郵便配達をしている人がいるのだろう」
と思うのかもしれませんね。

このように、抗議した女性と同じように間違った認識をしてしまってる人はいるのかも・・・
それって、すごい怖いことですよね・・・
こういう人は、メディアのいう事は全部本当だと認識してるのかも・・・

以前、1970年代後半のソ連軍侵攻前から2000年のアフガニスタンが舞台となった映画、
「君のためなら千回でも」見に行った話はここでも書きましたよね。
その映画を教えてくれたのは、
フォトジャーナリストの長倉洋海さんが支援している「山の学校」で知り合った人です。
彼女も暗殺されたマスードが好きで、山の学校に携わっています。

彼女が映画を教えてくれた時、ちょっと耳を疑うようなことを言いました。
「映画の中で、主人公のお父さんが息子の誕生日パーティーを家で盛大に催すシーンがあるねんけど、
その時、お父さんが「いや〜、マスード!」って言って、マスードっていう人と握手を交わすねん。
もしかして、生きていた頃のマスードちゃうかって思うねん。
私は見逃してんけど、マスードっていう人が一瞬映ってたと思うねん!
本物のマスードかどうか注意して見といて!」
「・・・・・・」

みなさん、どう思います?
この映画の原作は小説。
そりぁ〜、作者が体験したことを描いた内容かもしれないけど、映画はドキュメントじゃーありません。
映画では、1970年代の平和で豊かだった頃のアフガニスタンをよく描いています。
そしてソ連軍侵攻で主人公親子は亡命し、2000年タリバン政権下で変わり果てたカブールも
映画では出てきます。
時代背景をよく描かれた映画は、知り合いのようにドキュメントと思い込む人が
ほんとにいることに驚きました。

映画はあくまでも映画。
錯覚しないようにしましょう!





2008.04.18