
白壁に腰壁のナマコ壁が見事でなんとも美しい。
どの家も、とても美しい蔵。
北関東の蔵とはまた違う。
群馬、栃木でよく見る蔵は、大谷石。
最初見た時は、石の蔵でびっくりした。
そして、次によく見かけるのは、黒い蔵。
埼玉県とかで黒い壁の蔵をよく見かける。
石の蔵や黒い蔵は、関西では見た事が無かったので、すごく衝撃だった。
長野県の諏訪周辺の蔵は、関西でもたまに見かける外観で、なんだか関西エリアに戻ってきた感覚になった。

蔵を見ていると、屋根のすぐ下の中央に円形のマークが全ての蔵にある。
蔵によってマークが違う。
多く見かけたのが「龍」と書かれている。
「龍」は片面だけで、もう片面には違う文字や模様が描かれてあった。
模様は家紋かな??
下の写真のように家紋とは違う文字らしき物もある。

これはいったい何なんやろう??
これは直接聞いた方が早い!
家の人がたまたま出ていたので、車を止め声をかけさせてもらった。

「この龍って文字は、どういう意味なんですか?」
40代か50代の男性は、今まで当たり前のことなので、急に蔵の事を質問されてもわからないみたい。
たまたま一緒にいた20代の息子は、
「わー!ほんとだ!蔵にこんなのが描かれてたなんて今まで気がつかなかった!」
と、驚いていた。
私がこの地域の蔵の特徴を話していると、家の中から腰が曲がったおじいさんとおばあさんが
誰と話しをしてるんだ?という感じで出てきた。
「おー ちょうど良かった。おじいさんなら蔵の事がわかるかも?」
と、私の質問を耳の遠いおじいさんに大きな声で質問してくれた。
おじいさん;「これは「龍」だ。」
私;「なぜ龍なのですか?」
おじいさん;「昇り龍という意味だ。反対側は名字」
「え!?名字!?」
おじいさんの息子と思われる40代か50代男性と、孫の若者も一緒に驚いていた。
みんなで反対側を見にまわった。
すると、この家の蔵には「〇〇」と書かれてあった。

息子や孫が「わー!こんなところに名前が書かれてあったなんて、今まで気がつかなかったーー!」
と、びっくりしている。
私も名字が書かれてある蔵は初めて見た。
私;「他の家は、家紋が多いようですが、なんでこの家は名字なんですか?」
おじいさん「なんとなく」
私;「この蔵はおじいさんが建てたんですか?」
おじいいさん;「わしが建て替えたんじゃ。その時ななんとなく名字にしたんじゃ。
他の家の蔵も名字を書いてる家もあるよ」
おばあさん;「お爺さんが名字がええ言うてなー」
私も驚いたが、息子と孫が一番驚いていた。
おじいさんは蔵について、もっと説明してくれた。
おじいさん;「蔵の屋根は片方が長いじゃろ?」
そういえば、どの蔵も、屋根の片方が長かった。
おじいさん;「これは火事になった時、長い棒で屋根を道側にひっくり返すんじゃ」
私はてっきり軒下で作業するための雨よけかな?と思っていたが、そんな単純なことではなかったのか!
私;「屋根がなくなれば、蔵の中身に燃え移るんじゃーないですか!?」
おじいさん;「蔵にはもっとしっかりした屋根があるから中の物は大丈夫。
この屋根は蔵に乗せてるだけ。だから強風が吹くと飛んで行ってしまうんじゃ」
えーー!!
それって危ないやん~~
と、言いかけたが、グッと我慢した。
おじいさんからいろいろ教わり、勉強になった。
私がお礼を言うと、息子や孫は「僕たちも知らなかったことが聞けて良かったです」と言ってくれた。
今の家はどこ行っても同じだけど、昔の家屋って地域によって大きさや特徴が違う。
蔵も同じように地域によって違う。
地域の違いを感じて見つけるが楽しい。