初めての銭湯

3万円盗まれたが、大切な試験に合格したことに感激し、彼は私が用意しておいた夕食を食べる。


時間があれば、銭湯に連れて行ってあげたいなーと思っていた。

しかし、中国人はお湯につかる習慣が無く、特に中国南部の人たちは、熱いお湯に浸かれないし、人前で裸になって入浴するなど絶対無理!って言う人もいる。


3年間日本で留学していた貴州省出身のカンチャンも、銭湯や温泉に誘っても頑なに拒否していた。


同じ貴州省出身のカー君はどうだろう・・・?


前日、「温泉を知ってる?」って聞いた。

「知っている。友達が日本で温泉に行ったって言ってた」

「カー君行きたい?」

「うん、行ってもいいかな?」

「日本では、オールヌードにならないといけない。それは知ってる?」

「え!? ほんと!? それは知らなかった。 でも他人とは別だろ?」

「いいや。他人も全員オールヌードで同じ湯舟に入る。」


彼は絶句した。


「ちょっと考えさせてくれ…」

一気に消極的な返事になった。


「日本では簡単に温泉に入れるの?

僕の友達は、別府温泉に行ってたよ。別府は遠いよね?」


「関西は温泉は少ないけど、九州や東北、関東周辺は多い。

この近くにも温泉がたくさんある。」


「ほんとうに、みんなオールヌードで入るの?

水着を着ないの?」


「シャワー浴びるのに水着は着ないでしょ?

それと同じ」


ちょっと納得したようだが「挑戦する」とは言わなかった。


前日そんな会話をしていた。


その日は予定より早く帰宅し、急に時間ができたし、明日、明後日だと行けるかわからない。

銭湯行くなら今日だ!と、夕食を食べ終わった彼にYouTubeの「外国人用銭湯の入り方」を見せた。


彼は興味深げに映像を見ていた。


見終えた彼に「どう? 入れそう?」と伺った。

「うん。 いいね」と言う。


「じゃ今から銭湯行く?」


「え!? 今から!? 心の準備ができてないよ! 

それにすぐ行けるの?」


「歩いて15分ほどのところに銭湯があって、そこは日本でも珍しい真っ黒なお湯やねん。

行こう!」


少々戸惑っていたので、関東の黒湯の詳しい説明文をネットで探し、彼に見せるととても興味深げに読んだ。


黒湯に興味を示し「じゃ!行こう! 何を持っていけばいい?」


彼の銭湯用品をサッと準備し、すぐ出かけた。


銭湯までの道中、さらに詳しく銭湯の入り方とマナーを教えた。


「僕と君とは、別々に入る? 

どうやって待ち合わせする? 

君はいつもどれくらい入るの?」


「私はいつも1時間ほど入るかなー?」


「1時間!? 僕はそんなに長く入れないよ!」


「じゃ、30分後に待ち合わせはどう?」


「30分も長いけど、ま、30分後に待ち合わせしよう」


その日行った銭湯は、昔ながらの番台があり、番台からは、お互いの脱衣場横にある坪庭に面した休憩スペースの長椅子が見える。


その説明を事前に詳しくできなかったので、別々に入口を入り、番台越しに

「早く出たら、あの長椅子で待ってて」と英語で説明した。


「え!? この男性外人さん!? 大丈夫?」と、番台のおばちゃんが心配してくれた。

「外国人用の銭湯の入り方の映像を見せ、さらに詳しくルールを説明したので、大丈夫だと思います」

「ならよかった。じゃ私も気にかけて見といてあげるわね」


その銭湯は、閉店時間がちょっと早め。

40分後には閉店時間になっていた。

30分後に待ち合わせしているから、ちょっと急ぎ気味で広い湯舟を満喫した。

女性風呂は私が最後だった。

私が脱衣場に行くと、女性風呂の電気が半分消え、おっちゃんが掃除にとりかかった。

私も着替え終わり、30分後に番台越しに待ち合わせしている男性用脱衣所の休憩スペースを見ると、彼はいない。

番頭のおばちゃんが「あれ? 彼まだ入ってるわねー」

「まだ湯舟に浸かってるんですか?」

「そう」


あれだけ「そんなに長くお風呂に入れなよ~」って言うてたのに、まだ湯舟に浸かってるって!?


もう閉店時間だから彼を出さないと!


おばちゃんが女性風呂からそろそろ時間だよって言ってあげてと言うので、私は女性風呂から、大声で「カー君~ もう時間やでー そろそろ出て~」と叫んだ。


慌てて着替えて彼が出てきた。


「もう最高! 

日本式のお風呂がこんなに最高だなんて知らなかったよ!」


「カンチャンは銭湯に行ったことある?」


「ない。彼女は3年も日本で暮らしてたのに、一度も行かなかった」


「えー! 信じられない! 

僕は日本に来て2日目で入ったのに~

なぜこんな最高なのに入らない!?」


「彼女はオールヌードになるのが嫌らしい」


「僕も最初はそう思った。

でも、入ってたらどうってことない。

それより、湯舟に浸かるとがこんなに気持ちいいなんて驚きだよ!

昨日、今日と暑い中熱き回って疲れてたけど、広い湯舟に浸かっただけで、疲れが取れた。

まるで魔法だ!

日本滞在中、毎日入りたい!

明日も銭湯に行こう!


日本は最高!

こんなに素晴らしい体験をいっぱいできるなんて、想像しなかったよ!

僕、日本が大好きになった!

日本は毎日驚きの連続だよ。

日本に来るまでは、日本人は見た目も中国人と同じで、文化も中国の流れをくんでいる。

だから、中国とあまり変わらないだろうと思っていた。

でも、全然違った。

中国人は、本当の日本を知らない人がいっぱいだよ。


今まではオーストラリアが一番好きだった。

でも、今は日本がダントツに一番好きな国になったよ!」


初めての銭湯の帰り道、彼は日本を大絶賛してくれた。


半分強引だったが、銭湯体験をさせてよかった。





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Re: No title

Cさん

ただいまです…
今回は今まで以上に大変でした…

新潟の温泉かぁ~
いいですねー
私も今週末、墨の湯、五色の湯がある塩原温泉に行ってきます。
犬に噛まれた傷の為一か月以上湯に浸かれなかったので、久しぶりの温泉、久しぶりの湯舟に浸かって疲れを癒してきます。


No title

そりゃ本国じゃ土地が買えないからでしょう。

新潟の温泉はお米で有名な魚沼の湯之谷村というところです。
夏にぴったりのぬるいお湯の温泉が点在してるのです。

では中国気をつけて行ってらっしゃい。

Re: No title

Cさん
こんなに日本を気に入ってもらえるなんて私も驚きました。
帰国前には、日本で住みたい!
家を買う!って言いだしましたよ~

中国人ってすぐ家を買いたがりますね…

Re: No title

cさん

この辺りって黒湯なんですよ!
こんなに真っ黒なお湯の温泉があるなんて、こっちに引っ越してくるまで知らなかったです!
銭湯でも黒湯があるので、お気に入りです♪

最近は毎週末、近所の銭湯、スーパー銭湯だけでなく、栃木、群馬、山梨にも足をのばし温泉巡りをしています。
(地層、断層巡りをしてたら温泉と関係してることが分かり、今は温泉巡りしています)
温泉いいですよねー

新潟の温泉か~ どこですか?

No title

いろいろ体験して気に入ってもらったならよかったですねー。いい事ばかりではないと思うけど、いろいろ自分で見聞きして感じ取ってくれる人が増えるといいですね。

No title

かおりちゃんとこ、近所に黒湯の温泉の銭湯あるんかー。それはめぐまれてるなー。わたしはこれから新潟の温泉にお出かけしてきます。
プロフィール

かおり

Author:かおり
旅が大好きで、気がつけば50数カ国旅をしています。2006年念願だった旅行記を出版。
多くの人に旅の魅力やイスラムの国々の良さを知ってもらおうと、書著「やっぱり旅はやめられない イスラム編」を書きました。
2008年に第2弾となる「中国編」を出版。

最寄の書店での注文、もしくは上の“おすすめ商品!”の「やっぱり旅はやめられない」をクリックしてみてね!

プロフィール写真は、私本人ですが実物はまるで違います…あしからず。

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  • 2016年09月02日 (金)
  • 12時56分00秒
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