たった1枚の写真から

【ベトナム旅行記】 =たった1枚の写真から=

がけ崩れを無事通り過ぎ、また車に揺られているとだんだん霧が出てきた。

「あれー?霧が出てきたね。
さっきまでいたボンハーの村ではこんなに霧がかかっていなかったのに、なんで??」
「サパの方が標高が高いのよ!今サパに向かってるから今まで下ってきた山々を登ってるのよ」
そっか・・・
一見すると、ボンハーの村の方が田舎で山々に囲まれているからサパより標高が高く感じ、
勘違いをしてしまう。
標高差は1000m近くあるみたい。
そんなに自力で下っていたのか・・・

「サパは天気が悪いよ」
スーは、天気に詳しい。
1日目のトレッキングを終えた夕方、「明日は雨が降るからトレッキングは大変よ」と言っていたとおり、
その日の夜から雨が降り、翌日には深い霧がかかり霧雨が1日中降っていた。
きっと自然を感じながら生活をしているから、空気や雲の様子で分かるのだろう。

霧がだんだん濃くなり、私は睡魔が襲ってきて首をうなだれ熟睡。

Rickに「着いたよ」と起こされ目を覚ますと、今までののどかな風景とは一転し、サパのホテル前だった。
QueenHotel 1
サパは深い霧に覆われていて、とっても寒い。
寝ぼけて急な気温変化に何がなんだかわけが分からない。

スーは助手席に乗っていたけど車酔いをしたようで、道の脇で吐いていた。

「スー大丈夫?」
「あぁ・・・・ 苦しい・・・・」
スーの目から涙があふれていた。

スーは私たちをホテルに送ると仕事は終り。
「スー、ここから家までどうやって帰るの?」
「バイクか何かで帰る」
スーの家は歩くと3時間はかかりとっても遠い。
トレッキング初日の朝は、お父さんのバイクの後ろに乗り送ってもらっていた。
「お父さんと連絡は取れてるの?迎えに来てくれるの?」
心配する私に「大丈夫!なんとでも帰れるから!」
ちょっとウザそう・・・


私はスーに今からある人の所に連れて行ってもらうことになっていた。

それは、ベトナム出発前、カンボジアで知り合ったゆーすけが、ハノイやサパを旅したことがあり、
情報を教えてもらうために会った。
ゆーすけは、サパで5日間も滞在していたこともあり、サパの街や宿の情報など詳しく教えてもらうことができた。
少数民族の女の子の写真が数枚あり、
「サパの町を歩いてたら絶対この子達に会うと思うねん。会ったらこの写真渡しといて~」
「町歩いてるだけで会えるかぁ~?」
「会えるって! 俺、毎日この子たちと町で会ってたもん」
「なんでこの子たちは町をウロウロしてるん?」
「さぁ~?でも絶対会うねん」

渡せるか自信がなかったけど、サパに行ったらなんとしてでもこの少女たちを見つけて写真を渡そう!と、
旅の1つの楽しみにしていた。

3日間のトレッキングが終った翌日の夜の夜行列車で私はハノイに戻る。
最終日にサパの町を散策して、写真の少女たちを見つけようと思っていた。
その話をしながら写真を1日目の宿でRickやRichardに見せると、「スーに尋ねてみるといいよ」と言われ
スーに写真を見せた。

「この子、知ってるー! あ、この子も知ってるぅーーーー!!」
えぇ??? もう見つかっちゃった。
「この写真どうしたの?」
「私の友達が、去年の春にサパに来てこの子達と仲良くなったんだって。
それでこの写真を渡して欲しいって言われたの。
私、このトレッキングが終わったら彼女たちを探そうと思って。」

バイクに乗った女の子2人の間に、ゆーすけが真ん中に乗り、3人笑顔で写っていた写真があった。
ゆーすけは、運転している彼女ととっても仲良かったらしい。
スーは、その彼女を指差した。
「彼女はもうサパにはいないよ」
「なんで?どこに行ったの!?」
「今年の春、好きになった人を追ってハノイに行ったの。それから戻ってきてないの」
えーーーー!それって駆け落ち??すごいドラマチックやん~
「好きな人とハノイで一緒に暮らしているのかなー?」
「分からない。彼はオーストラリア人だから・・・」
えーーーー!!
衝撃的な実話に仰天。

スーは、他の写真を見て、
「あ!この子、今朝出発の時、朝一緒にいたのにーーー!
なんで早くこの写真を見せなかったの!!」
えぇーーーー!!
あぁ。。。 なんてこった~

「でも、彼女の叔母がサパにいるから、トレッキングが終わったら、連れて行ってあげる。
それと、もう1人の子は、カカホテルにいるから」
カカホテル? 「歩き方」の地図を見てもそんなホテルは載ってない。
「カカホテルってどこ?」
「もっー!そこも連れて行ってあげるから!」

そんな事情で、サパに戻ったらスーに彼女たちがいるホテルや叔母さんのところに連れて行って
もらうことになっていた。

サパはむちゃくちゃ寒かったので、私は一度ホテルにチェックインをすませ、
持ってきたセーターに着替え、自分の持っている最高の厚着をしてサパの町を歩くことにした。

私はスーに連れられ寒いサパの町を少し歩き、市場へ入っていった。

「寒いよー 気分も悪いし、最悪~」と言いながらスーは腕を組んできた。
スーは薄いジャンパーを羽織っているだけで、足は素足だしとっても寒そう。
「そうや!この手袋をはめ」
と手袋を渡すと「いらない~」とそっけない返事。
「それより、10$ちょうだい」
えっ!?スーがそんなことを言うなんて・・・
「10$は高すぎるよー じゃ、ご飯でもご馳走しようか?」
「いらな~い。 寒いよー 気分が悪くてしんどいよー だから10$ちょうだい~」
どんな物乞いや!?
スーのジョークのようだった。
スーは、仕事が終わったからなのか、ガイドをしているときより甘える女の子になっていた。

市場奥に、黒モン族と赤ザオ族たちが、自分たちの民族衣装や刺繍を施してあるブランケットや
ベットカバーなどを売っている一角があった。
その中の1人の女性にスーは話しかけ、私に写真を出すように言ってきた。
ゆーすけから預かってきた写真を見せると、その女性は急に笑顔になった。
SAPA 1

スーが事情を話すと、すぐに民族衣装の胸元から携帯電話を取り出し、写真の少女と連絡をとってくれた。
電話を切ると、写真の少女は今トレッキングツアー中で、明日の15時にサパに戻ってくるらしい。
15時にならまだ私はサパにいるから彼女に写真を渡すことができる。
明日の15時にここに来る約束をして叔母さんと別れた。

次は、カカホテル。
着いたところは「CAT CAT HOTEL」。
「キャット キャットホテルやん~」
英語ってその人の国の発音とかクセなどが出て、聞き取りにくいことがあるけど、
「CAT CAT」を「カカ」と発音されたら、そらわからんわー

「彼女がいるホテルよ。私はここにいるから、あなた1人で行ってきて」
「えー?なんでー?スーは来てくれないのー?」
「私はここで待ってるから、早く行って!」
ホテルフロントに入る階段を登っていると、ホテルから黒モン族の女の子が出てきた。
写真と彼女の顔を何度も眺め、あれ・・・?もしかして・・・?と、その彼女に無言で写真を見せた。
彼女は、何も言わず写真を渡され、意味が分からない様子で写真を覗き込んだ。
すると、驚きながら満面の笑みになり、「これ、私!!」と言った。
階段のすぐ下で待っていたスーも、本人がすぐ現れ私が一目で見つけたことにすごい驚いていた。
すぐスーが駆け寄ってくれ、彼女に事情を話してくれた。
最初は、この写真がいつ撮られて、一緒に写っているゆーすけのことも全く思い出せない様子だったけど、写真を何度も見続けていると、だんだん思い出してきたみたい。
「この写真は、2年前じゃない? この写真の場所は確か・・・ この先の山じゃないかなー?」
彼女たちは、毎日いろんな国の人たちと接しているから、なかなか思い出せないみたいだけど、
徐々にゆーすけのことも思い出してきた。
「彼は今何してるの? どこにいるの? 私の連絡先を教えるから連絡ちょうだいって言っておいて!」
彼女はそう言って、自分の名刺をくれた。
彼女の名は、ジー。
SAPA 2


翌日の15時、私はもう1人の少女と会うため叔母さんがいるお店に行った。
すると、おばさんは私を見るなり、携帯電話で彼女と連絡をとってくれた。
「3分で彼女はくるわ、ちょっと待っててね」
店内をウロウロしながら商品を見ていると、私の腕をトントンと誰かが軽くたたいた。
降り向くと満面の笑みで私を見つめる少女がいた。
「もしかして・・・!?」
「そうよ!あなたが探していたのは私よ!」

彼女もとっても嬉しそうで、私たちは固く握手をし、無事に出会えたことに嬉しさがこみ上げ
思わず2人で抱き合った。
写真を見せると、彼女は目を大きくしながら大喜びし、
「ありがとう!ありがとう!」と私に何度もお礼を言った。
たった1枚の写真なのに、こんなに喜んでもらえるなんて、私まで嬉しくてたまらない。

彼女の名は「ランちゃん」。
ランちゃんは、ゆーすけと遊んだことをとても鮮明に覚えていて、
「彼は今どこにいるの? どうしているの? 彼はいつサパに戻ってくるの?」と質問攻め。

そして彼女は、「ちょっと待って!3分だけここで待っていて!!」と言うと、どこかへ去っていった。
何がなんだか分からないままその場で待っていると、10分ほどして彼女が息を切らせながら戻ってきた。
彼女の手には2つのブレスレットが握られていた。
「1つは日本に帰って彼に渡してほしいの。そしてもう1つはあなたへのプレゼント!」
そう言って、彼女は私の腕に2つのブレスレットをはめてくれた。
「ありがとう!わかった。ランちゃんからのプレゼントって言って日本に帰ったらすぐ彼に渡すね!」
「うん、お願いね!」

彼女にお礼を渡したい・・・
ゆーすけも同じ立場だったら、絶対そう思うだろう。
持っていたアメちゃんを渡したものの、それだけでは納得できない。
何かないものか・・・・と、カバンの中を探すと、今回のベトナム旅行のために買った手袋があった。
この手袋は、ほとんど使ってなくて新品同様。
「私からは、この手袋しかないけど受け取って」
彼女は喜んでその場で手袋をはめてくれた。

ランちゃんは、自分のメールアドレスを書いてゆーすけに渡して欲しいと託った。
彼女のアドレスは、Yahooメール。
こうして彼女たちは各国の友人たちとメールのやり取りをしているのかなー?
思わず、スーや2泊目のガイドの少女たちの姿と重なった。


帰国後すぐ、ゆーすけに連絡し写真の少女たちと2人も会えたことや彼女たちの近況を報告した。
まさかほんとに写真を渡せるとは思っていなかったようで、ユースケもとても喜んでいた。


私とその少女たちとは初対面。
写真を見せたとたん、彼女たちは表情が緩み笑顔になってとても喜んでくれた。
私は何もしてないけど、あんなに喜んでくれるなんて、私まで幸せな気分になり嬉しくなった。



●ランちゃんの写真は、フィルムで撮ってて、ゆーすけにランちゃんの写真を渡したので今はないので、
みなさんにランちゃんの笑顔の写真を見せることができなくて、すいません。
そのうち焼き増ししてアップしますね!

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

かおり

Author:かおり
旅が大好きで、気がつけば50数カ国旅をしています。2006年念願だった旅行記を出版。
多くの人に旅の魅力やイスラムの国々の良さを知ってもらおうと、書著「やっぱり旅はやめられない イスラム編」を書きました。
2008年に第2弾となる「中国編」を出版。

最寄の書店での注文、もしくは上の“おすすめ商品!”の「やっぱり旅はやめられない」をクリックしてみてね!

プロフィール写真は、私本人ですが実物はまるで違います…あしからず。

あなたは何人目かな?
現在訪問者数
現在の閲覧者数:
無料カウンター
カレンダー(Ajax)
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
日記タイトル一覧
  • たった1枚の写真から
  • 2009年01月17日 (土)
  • 13時22分08秒
  • この記事にはトラックバックできません。
by AlphaWolfy
コメント
月別アーカイブ
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
FC2ブックマークに追加する
FC2ブックマークに追加
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる